2010年8月17日火曜日

太鼓の種類 ムションド その3

“BUMBUMBU”が“ブッ叩く”ような感じに対し

ムションドはタッチが非常に大事だ。

打面中央のムピラと呼ばれる黒いゴム?のようなモノが

この太鼓にユニークな音色の効果をもたらし

本当に変な音が出せるようになっている。

スラップ音も中央にムピラが張ってあるので

DjmebeやCongaのようなスラップは無理。

で、両サイドを使うか、手に角度をつけて手前で鳴らすしかない。

ムピラで凄く長いサスティンが得られる為

スラップ以前に、オープンとミュートやコンガのモフみたいな音を

駆使し、また、片手で圧力を加えベント音を出したりして

色々な音を生み出す事が出来る。

イメージ的にはインドのタブラのような感じ。

また、多くのギリアマのNgoma芸能でキメの多い

“GONDA”や“MABUMBUMBU”等では

構成としてムションドが号令を出し、それに対して

大勢のブンブンブが応えるものが多い。

5人以上の名手がブッ叩くブンブンブは

それだけで大地を揺るがすような爆音になるので

その中でも聴き取れるように、ブンブンブとは全く異なる

ムションドの音はソロ楽器又は号令用太鼓としては

必然だったのかも知れない。

また、これは後でもっと詳しく述べたいと思うけど

所謂、「一般的に認知されるAfrica音楽」としては

多分、米国のJAZZ屋達の影響があると思うが

*コール&レスポンスとポリリズム 。。。なんかの他に

“複雑なインテンポの中で太鼓と踊り手、


又は、太鼓同士の白熱する即興演奏の応酬” なんてのがある。

こういった無知から来る誤解は未だ根強いモノがあるし

早く地球上から消えて欲しいと切に願うが

そういった誤認識者達が聴いて????と思うのが

先述のGONDA等のNgomaであり

そいつらでも喜びそうなのが“Ngoma Za Pepo”なのだ

これはアンサンブルの構成としては

チャプオと呼ばれる2組の両面太鼓がベースのリズムを叩き

ダバと呼ばれる金物がテンポを出し

その上をムションド叩きがインテンポで

ある程度の約束の中でソロを叩くといった恰好だ。

このチャプオのアンサンブルだけでも色々と楽しく

それなりに奥が深いので、習い始めはこのチャプオか

ダバからはいから入る事が多い。

同じミジケンダのドゥルマやディゴ族も“センゲニャ”等の

Ngomaでチャプオを使うが、彼らはムションドの代わりに

複数の太鼓をマリンバのようにして叩くので

実にメロディアスなアプローチになる。

その太鼓のフレーズ等もチャプオ入りで構成されるようなので

ソロの太鼓が4つ+両面太鼓2組がキチンとチューンされている

必要があるように思える。

奏法も結構細かくて、それだけ音の同じような太鼓を

沢山使って出来あがるアンサンブルだから

ベースのチャプオはクリアな音で叩く必要があるのじゃないか?

そう僕は思っている。

一方のギリアマのNgomaにおいてはブンブンブとムションドと云う

強力な音を持った太鼓があるので、まあ、Ngomaの種類にもよるが

“Ngoma Za Pepo”においてはチャプオは“クリアな音”より

全体として“ウォーン、ムヮーン”と包み込むような音の方が好まれる

と思う。

だから、全体としては

ダバがザクザクとテンポを刻み、チャプオが2組でムヮーンとした

雰囲気で音の全体を包み込み

四方から大勢の歌のコール&レスポンスの中

踊り手に向け、又はそこに居る人達全てに向け

ムションドが音を解き放ち、ブンブンブで句点、着陸を行う。

まあ、こんなカンジじゃないかな?

初期の“Ngoma Tour”ではこの“Ngoma Za Pepo”を

一つのハイライトとして行ってきたが(模擬だけど)

ペポ・ムガンガ云々は抜かして単なるNgoma芸能と

として見てもギリアマNgoma文化の中で一番

先進国の“今、現在”にマッチしたモノだと思うけれど、、、、

まあ、スグ日本人や欧米人は俄かスピリチュアル主義に

なり易いから、、、、それはそれでスッゲェ面倒臭いので

流行んなくて幸い?かなあ。。。。

大体、毎回、僕に槍玉に挙げられるDjembeだってさ

日本では色々見聞を広めた挙句、やっぱりDjembeって言う人も

居るしさ、そういう人達はこれだけ猫も杓子もDjembeと流行ると

逆に可哀想になるよ。今の世の中、流行ったら廃れるからね。。。。

やっぱ、デカイ木切って、獣屠殺して皮剥いで、、、、て言う太鼓を

少しは大事にしようよって思うもんなあ。


2010年8月14日土曜日

太鼓の種類 ムションド その2

「マザンバヒのムションドは凄い!」

これが僕の相棒サイディとの共通意見だ。

アレぐらい凄いのはチョットいないな、、、

彼は父親か母親がディゴ族のハーフで

昔ながらの“ムゼーカヒンディ・ツァンジェ”のような

ムションド1本にブンブンブが1本(多くて2本)のスタイルを

現在の大中小のブンブンブを並べるスタイルに変えた張本人だ。

初めて彼の太鼓を観たのが第1回の“Ngoma Tour”で

「なんじゃ!こりゃぁ!!」と言う衝撃を受けた。

もう、全く次元が違う、としか言いようの無い「音」で

ムションドが早ければ“速射砲”のように飛び出し

他のカブンブンブ達と組み合わせれば“芋虫”のように這いずり回る。

終いにはカブンブンブ達を横に寝かせて

その上に座り、足も使い始めて自由自在に叩き始めた

まあ、兎に角、傍目からは

「かる~く叩いている」だけなんだが、、、、、

非常にちから力強い音で

1本の太鼓とは思えないほどの

バリエーションを持って語りかけてくる

いやぁ~凄い!御見それしました。

「手順は後追いで何とかなる」

「秘密はあの魔法のようなタッチだ」

これも僕とサイディの共通意見

だって、マザンバヒ出現以降

殆どのムションド叩き達が

ブンブンブの数を増やしたけれど

あの魔法のタッチが無ければ

ゼ~ンゼン、、、ダメ!!(苦笑)

僕はその後も何度か

Ngomaの名手達のお葬式とかで

マザンバヒの太鼓を聴いたが

彼がムションドを叩いた後

他の太鼓叩き達は

「ま、一服しよう」と叩こうとしない(苦笑)

巫女さん達も彼のムションドに翻弄され

「燃え尽きた」カンジになってしまっている。

そして、彼らは魔法使いみたいな感じなので

マザンバヒ自身も嫉妬によるゴタを避けるために

実に控えめで

サッと叩いて、サッと止めて、サッと去ってしまう。。。

う~ん、、、勿体無い。

マザンバヒがソリストで

僕とサイディがサイドを固め

ダバに凄い奴が入って

凄い巫女さん4、5人で日本行けたらさ

ガキのオママゴトで

「ブッ飛ぶ!」「最高!」とか言っている連中が

文字通りシロ目剥いてブッ倒れるか

硬直して動けなくなるようなモン

観せられると思うけどね

まあ、金が無いからムリか!!

カズング・マーシャとカズング・マザンバヒの

写真が無いのが、、、、、、、、、、

う~~~ん 残念だ。

お詫びにこれが正しいムションド叩きの姿勢

オッチャン!格好良い!!











2010年8月13日金曜日

太鼓の種類 ムションド その1

ムションドはスワヒリ語ではムソンドと呼ぶ。

が!僕の専門の他の民族ではソレは

“肛門”を意味するので

何となく気恥ずかしく「ムションド」と呼んでいる。

だって

「彼は凄いムソンド(肛門)使いだね~!」とか

「僕は飛びきり上質のムソンド(肛門)を3つも持っている」とか

、、、、、変じゃん?やっぱし(笑)

さて、そんな下品な話はこれぐらいにして「ムションド」です。

この太鼓はギリアマ太鼓の最強の武器と言っても過言ではない

素晴らしい太鼓であります。

長筒状のボディで

打面に付けたゴム(樹脂が主)のトリックが

この太鼓のキモです。

この太鼓を名人が叩くと、、、、太鼓が「話し始めます」

“GONDA”“MABUMBUMBU”等でも

この太鼓がソリストで、一番上手な人が叩くのです。

それぐらい難しい太鼓ですが

この太鼓があるからギリアマを選んだくらい

僕にとっては意味のある太鼓。

基本的にこのサウンド・システムを持った太鼓は

アフリカ大陸各地にあります。

下の写真はサファリがムションドを暖めているもの



























ブンブンブと比べると皮も薄くデリケートなので

こうやって音を確かめながら暖めます



























打面の黒い物体がキモなのです。

匡哉の演っているドゥルマ・ディゴ族らの太鼓

“SENGENYA”で使われる「ンゴマ・ンネ」

「チャプオ」とが複雑に絡み合いつつ奏でる

縦横無尽なプレイに負けない説得力を持つ

それも、1本の太鼓でだぜ?スゲ-だろ?

しかし!!!

それだけの名人が(僕も含め)日本で

ムションドを叩いた事は無い。

マビマンジこと水川君やブルケンゲ時代の匡哉

そして僕が3人が束になっても遠く及ばない

それだけこの太鼓の魅力は特別なのだ。

まだまだギリアマの太鼓世界には

凄いムションド叩きがゴロゴロしている。

その中でも突出した腕を持つ叩き手は

“MABUMBUMBU”カズング・マーシャ

“Ngoma Za Pepo”カズング・マザンバヒだ。

カズングの親父はムゼーマーシャで

ムゼーランドゥの少し後の世代の

“MAMABUMBUMBU”の名人だ

大体、この辺の世代のNgomaの名手は

各人のペポが憑り付いていて

それと一緒に神懸かり凄いNgomaを演じる

ムゼーランドゥのペポは本人みたいに

お茶目で豪快!!だけれど

ムゼーマーシャのは狂気じみた感じだ

ちょっと怖い。。。。

武道家でもある水川君が

師事したのもこの人で

練習がグヮ-!!ッと盛り上がりところで

ミスでもしようもんなら、、、、

ああ、考えただけでも恐ろしい。。。。。

水川君も習い終わってナイロビに帰り

日本に戻っても暫くは写真であっても

ムゼーの顔を直視できなかったという。。。。

そんなムゼーマーシャが大事な演目“KIGANGA”において

自分のパートナ-として連れ歩くのがカズングだ。

まだ、20歳ソコソコじゃないかな?

今年の初めに某有名グループのダンサーが

ウチの村に来てDVDの撮影を行った時

久々にカズングの太鼓を聴いたが

またスケールのデカイ太鼓叩きになっていやがった。 

全く、イヤなガキだ(苦笑)

そして、“Ngoma Za Pepo”の稀代の名手

“カズング・マザンバヒ”

この人は、、、、す、す、す、、、凄い。 

太鼓の種類 ブンブンブ その3

これがウチの村の太鼓頭・新旧二人


                            
手前がシャウリで奥のサル番長似のカメラ目線がロバートさん

現在、ロバートさんはこの村を出て、ガンダにある自分の村で

活動を続けている 。僕がNgoma Tourを行いムゼー・ランドゥの

「キガンガ」を演じて貰うには必要不可欠な人だ。

ムゼーは自慢の息子“天才カタナ”が居るけれど、

やっぱり、「キガンガ」は新作より、古い曲の方が面白い。

良く出来ている作品が多いと思う。

こういった曲は幾ら天才カタナと言えども叩けないから

ロバートさんはとっても大切な存在だ。

“今、現在”も現役で新曲を創作し続ける80代!

ムゼーランドゥは自分の新曲が一番大事だろうが、、、

“ムゼーコータ”や“カリサ・シリア”“ムゼーブンゴ”達

僕がこの世界に入った時には既に亡くなっていた

MABUMBUMBUの伝説的名手達の曲は

やっぱり、、、格好良い。

一方、シャウリは僕と同い年で

この村にちゃんと関わり始めた頃には

既に太鼓若頭として才能を発揮し

「ああ、、こいつが後を継ぐんだろうな」と思ったが

その後、村の金を惚れた女に注ぎ込み

村を追い出されてしまっていた。。。。

それからはムゼーカデンゲのGONDAや

ムゼールベンのNAMBAのグループで叩き

“Ngoma叩きの一匹狼”としてキャリアを積み

Ngomaの腕一本で渡り歩いたことが

良い方に作用して

更に強力なNgoma叩きとして帰って来た。

勿論、このキッカケは「Ngoma Tour」だ。

最初、頑なだったムゼーも

3年目かな?村に立ち入る事を許し

4年目には村に復帰できた。

彼はサファリの兄貴で

弟、後輩達のような“爆音”は無いけれど

正確なタイム感と曲やアンサンブルの理解度

タッチの種類等でやはり一つ抜きんでている。

“GONDA”“NAMBA”そして“MABUMBUMBU”と

よくもまあ、 これだけの曲を覚えたもんだ、、、と感心する。

それぐらい各種Ngomaの曲を知っている。

特に、僕がこの世界に入ったキッカケの

“GONDA”も叩けるという事で

僕自身が勝手に贔屓しているのかも知れんけど。。。。

そんなシャウリがGONDAのフルメンバーを従え

最高に格好良かった時の写真がこれだ!

“KIGANGA”が名人の優れた個人芸であり

噺家の名人芸に近いのに対し

“GONDA”は大勢による大掛かりな

ギリアマ式オーケストラだ。

日本での再現は不可能に近いが

僕が一番好きなNgomaでもある。

太鼓の種類 ブンブンブ その2

これがサファリ




これがジョロだ。




二人とも生粋のブンブンブ叩き。

爆弾のような凄まじい音圧ならジョロで

太鼓全体の腕にかけてはサファリに軍配が上がる。

この二人が如何にして“爆音”を得たか、、、

その秘密を知るには

昔、ゲデ遺跡内に村があった頃まで遡る。。。。

当時は今と違い遺跡に来る観光客相手に

結構、商い(Ngoma)が繁盛していた。

シーズン中には朝から晩まで叩き続ける毎日、、、

当然、二人の手はボロボロになる。

ムゼー(長老の意)の手は別物だから

幾ら叩いても大丈夫。

だから、二人はボロボロの手のまま

休むことなく叩き続けなければならない。

ある日、サファリとジョロは考えた

「太鼓に穴が空いたら休めるかも、、、」


「少なくとも新しい皮を張り替えるまでは、、、」

太鼓自体が壊れたら仕事にならないが

皮ならスグに手に入る。

そこで二人は疲労と手の痛みを力瘤に変え

アホみたいな勢いで叩き続け

遂には村中の太鼓の皮を全てブチ破り

見事、休みを勝ち取ったとさ(笑)

あはははははは!!! アホだ。。。

でも、カッコイイじゃん?

俺だったらズルいから

仮病を使うか、皮に細工して破るだろうな

この二人はそんな小賢しさは一切なく

太鼓と真っ向から勝負を挑み

若さと体力でブチ破っていく

爆音は歌い手や踊り手にも飛び火して

Ngomaはより一層盛り上がる。

元々、ハードヒッターの多いギリアマ族でも

元祖“爆音”みたいなムゼーだから

「もう少し、弱く叩け」とは言えない(苦笑)

最近は皮も高くなり

この二人の「撃ち抜き打法?」も禁止!

みたいな雰囲気だが

その音圧たるや、問答無用の説得力で

「棚から牡丹餅」の必殺技!として

ここぞ!と云う場面では

今でもその“爆音”を聴かせてくれる

また、純粋なガキ共にはもっと強力に

この爆音が影響して(笑)

ウチの村のガキ共の大半は

タッチ、サウンド・コントロール以前に

太鼓を「ブッ叩く」事から始める(苦笑)

それが音楽的か?どうかは別として

こういった、圧倒的にバカバカしくも

突き抜けた説得力に

惹かれてしまうのだ

俺は(苦笑)